パンの耳食べる方の裏方。

物書きの端くれの遊び場です。ゆるりとお付き合いください。

ひょんな事から、友人を有名にしてみた(0話)

「とりあえず、俺を有名にしてくれ!」

 

 

 

 

先週の土曜日だったでしょうか、失礼にも夜中にかけてきた友人が私の



「ちょっとさすがに深夜2時に電話は」

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という声を遮って言い放った一言です。

 

 

twitterのフォロワーを増やしたいねん。」

 

 

私が説明を求める前に東海訛りの関西弁(?)で延々と何故有名になりたいかについて、語りだしたのです。

 

彼の名前は勝谷健士郎。⇩この男です。

twitter.com

 

 

想えば、彼には振り回されてばかりでした。新たな団体を作るからと勝手に団体創設者に祀り上げられ、漫才をするからと言ってメンバー集めやネタ合わせに巻き込まれたり・・・

 

他にも挙げればきりがないこの所業の数々が、この時私の頭によぎったのです。

 

私は、大いなる熱意を振りかざし、電話口に立つこの男の得意げな顔を想像しました。

 

私はその時、決めました。

 

「いいだろう。やってやろう。」

 

彼の反応といえば、予想通りといった感じでした。その反応に対しての怒りはひとまず飲み込んで、私は一つ条件をつけることにしたんです。

 

 

「僕の言うことをすべて守り、どんなにきつくても弱音を吐かないこと。」

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予想通りの答えが返ってきました。

 

「もちろん!」

 

ということで、皆さん。

 

僕はひょんなことから、友人を有名にさせることにしました。

 

これは復讐でもあるのです。さんざん私を振り回した彼を逆に振り回して、手の上でころころとして、もうとがった部分をつるっつるに丸くしてやるんです。

 

経験?そんなものはありません。記事やデータと少しの勘を頼りに手探りでやっていくんです!

 

この活動も、私に多大な負担がかかることは目に見えています。

 

えぇ。分かります。そんな重荷を背負ってまでやるべきことなのかと。

 

私も最初はそう思いました。

 

私はおそらく、無意識のうちに彼に復讐するときを虎視眈々と狙っていたのでしょう。

 

その無垢な復讐心が私の背中を力強く押したことは間違いありません。

 

私が辛くてもいい。彼の苦しむ姿が見れるならね!

 

まさに純朴で真面目な相棒的存在が、ダークサイドに堕ちたというわけです。

 

海外ドラマなら第3シーズンですね。いわゆる神回といわれる回です。

 

 

そんな神回を皆さんは目の当たりにしているんです!

 

 

 

どうか私のこの復讐劇を最後まで見届けてやってください。

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次の記事から、私がいかにして彼を有名にさせるのか。そしてその結果はどうなっていくのかを逐一、おそらく週に1度、報告していくことになります。

 

 

 

是非、ダークサイドの応援よろしくおねがいします。

 

 

 

僕は悪じゃない。もう一つの正義なんだ!!

 

あ、みなさん季節の変わり目です。体には十分に気を付けてくださいね。

 

 

ゴゴ

「退屈よ。私にとってはクリスマスも正月も、自分の誕生日だって退屈だもの。」


 夜空を見上げる彼女は、「退屈そうだね。」という僕の言葉に、機械的に答えた。僕にはベランダで空のある一点をじっと見つめている彼女の沈黙として現れた絶対的主張が、僕を試すための実験的沈黙にも感じられた。『この「沈黙」をあなたはどう受け取り、どう答えるのか』を彼女はその「沈黙」という、ある意味で最も有効な手段をとって僕を試しているのだ。
 その問いに対する、僕の「退屈そうだね。」といういたって平凡な答えに、非凡な彼女がそう機械的に答えるのは必然であった。今日のこの時間を共有する僕なんかより、常夜共にする夜空のある一点のことの方が彼女は重要であるかのように、その視線はまっすぐ、それでいてどの銀河よりも煌めいていた。


「僕にはそうは見えないな。君はいつも自分の世界で輝いているように見えるけど。」


 今考えれば、この言葉はいたって僕らしくない発言だった。僕はいつだって相手の心理を伺いながら発言をしてきた。彼女がこんな言葉をかけられてよく思わないことは容易に理解できるのに、僕はどうしてかその言葉を自然と、それこそ彼女が放った言葉のように機械的に、彼女の方をちらりとも見ないで呼吸をするように吐いたのだ。
すぐにわかった。僕にとって空気を吐くように出たその言葉が唯一の反撃であり、唯一の本音だったと。しかし彼女は絶対的沈黙を続けた。その沈黙は、僕の言葉の本意を理解したうえで僕の弱さのすべてを包み込もうとする残酷な優しさを意味していた。僕は決して、彼女を文字通り振り返らせることはできなかったのだ。
 車道沿いの僕のアパートが時折走る車のヘッドライトに照らされるたびに、彼女の横顔に色が帯びる。色彩が躍るその一瞬、僕は彼女と最初にあったときのことを思い出した。

 

 僕が百万遍知恩寺で行われた古本市の帰り、何冊かの哲学書と、研究用に古典を手に入れた帰りであった。いびつに膨れ上がったリュックサックの重さに耐えながら空を見上げるようにして歩く僕は、書籍探しに酷使した眼と脳みそを休ませるため立ち寄った喫茶店ゴゴで彼女と相席になったのだった。「あら、ずいぶん大きなリュックサック。」と記憶上の彼女が煙草をふかしている。


 入り口を正面に、左手にカウンターが五席ほど、右手にソファ席が二つしかない狭い喫茶店だった。割烹着を着て笑顔をこぼす人の好さそうな女将さんが、せっせと研究器具のようなものでコーヒーを入れていた。手狭な通路を五歩ほど進み、唯一開いていた奥のソファ席に腰掛けたとき、正面に座っていたのが彼女だったのだ。


黒い髪を短くそろえ、髪の色と同じ漆黒の装いが大きな金色のピアスと、赤いルージュを際立たせている。その色合いが、彼女の白い肌をより鮮明にさせ、その輝きは鮮明に思い出すことができた。そんな彼女が、ムズカシイ顔をしながらシェイクスピアなんか読んでいるものだから、気にならない理由が見つからない。「だめだ。全然わからない。」そうやって乱暴に投げられたシェイクスピアゲーテをはじめとする古典文学が彼女の目の前に山となっていた。「よくこんなに名著だけを集めましたね。」という疑問に「私、文学はさっぱりなの。だからある人がこれだけは読んどけってよこしたのよ。けれど、こんな本、私の人生の役には立たないみたいね。」と答えた彼女の声は、すうっと僕の心底に沈み込み、今でも僕は取り出すことができるだろう。そんなやり取りの後、喫茶店の角のテレビを見つめる彼女の横顔に僕は虜になっていた。長いまつ毛、滑らかな鼻筋、艶やかな唇、白い肌、僕の視線を支配する彼女のすべてがいとおしく、それでいて憎らしくもあった。そんな彼女の印象的な横顔が、今まさに目の前の彼女と重なったのだ。

 

「たばこ、もらえる?」

 

 僕は机の上にあったセブンスターとライターを彼女に渡した。「ありがとう。」に軽くうなずいた僕は「お茶でも」と冷蔵庫へ歩く。

 


「ねえ。私、ずっと退屈なの。」

 


「そうだね。」


 彼女の退屈に二つの意味があることを、僕は知っている。一つは口癖のようにただ時間的空白を埋めるためのもの。もう一つは、自己防衛的な、心情的空白を埋めるためのものである。この時の「退屈」は後者の意味合いが強いことを僕は確信していた。「そうかな?遊びのようなものだから分からないけど。でも退屈しのぎにはちょうどいいの。」そういって笑った彼女の声が、僕の心の底から再生された。その言葉は、彼女の描いた作品に対してはなった僕の「すごいですね。」の返答だった。奇しくも彼女と僕は、とあるガレージで再会したのだ。


 初めての出会いから二週間がたったころだった。喫茶店の出会いで一目ぼれをしたと言えども、僕は彼女を引き留めることも、ましてや連絡先を聞くこともしなかった。いや、その一時の出会いと別れがもたらす偶発的で、感傷的な時間に美学を感じる感性は持ち合わせてはいなかったし、彼女を見逃してもほかにあてがあるというわけでもなかったのだから、できなかったというのが正しい。ただ単に勇気が出なかっただけだ。
その日、僕は友人に頼まれて北大路にあるというガレージに届け物をしに行った。友人の先輩が文芸賞の制作に向けて缶詰めになっているというそのガレージで、先輩の恋人として彼女が現れたのだった。

 ガレージの中に迎えられ、恋人と紹介されたとき、僕には悔しさの波が押し寄せ眩暈を催した。しかしその後、彼氏という先輩の作品を読んで納得という大波が、どこか屈辱的とも感じていた僕のやるせない感情を飲み込んでしまい、二人の関係を至極当然のことだという風に理解した。海の底に沈んだ感情は、地底火山のように時々ぐらぐらと微動するだけで、感情として表面化するほどの大きな起伏は起こすことはなかった。

 
 彼女は友人の先輩とこのガレージを共用しているらしく、芸術大学の卒業制作に向けて彼女も同じように缶詰めになっているということだった。彼女は大きなキャンバスに様々な色の絵の具を重ねていた。服や手をめいっぱい汚しながら限られたキャンバスに最大限の自分をぶつける彼女を見て「すごいですね。」といたって凡庸な言葉が口から洩れた。「そうかな?遊びのようなものだから分からないけど。でも退屈しのぎにはちょうどいいの。」と初めて見せた彼女の笑顔で、汚れた手も服も含めた彼女のすべてが一つの芸術作品となり僕の五感を奪った。素直に、彼女に憧れ、そして尊敬さえした。

 

 

 


「私は、ただ退屈をしのいでいただけ。」

 

 

 

「そうだね。」

 

 


お茶を彼女に渡して、僕はまた部屋の布団の上に座った。夜風が窓から忍び込み僕の肌を刺すようにして消えていく。もう夜は冷えるのか。布団の上には、僕と彼女が脱ぎ捨てたものが乱雑に散らかっている。

 

 


「寒くない?」

 

 


「うん。」

 

 


彼女は、今夜一人で鴨川のほとりを歩いていた。

僕はたまたま彼女を見つけると彼女の「飲みに行かない?」との誘いを受けて彼女と夜の木屋町へと繰り出したのだ。そこで会話したことは取るに足らない、学生同士の談笑であり、愚痴であり、詭弁であった。そして、そのまま彼女と僕は、すべて自然的な流れで、僕の下宿先へと向かった。特にこのことに関して言葉を交わさなかったが、道すがら終始彼女は、この世の退屈とそれを埋めるためにしてきたことを僕に話した。

 

 

僕は初めて、彼女の弱さを見たのかもしれない。

 

 

僕は知っていた。

 

 

なぜ彼女が鴨川を一人で歩いていたのか。

 

 

僕は知っていた。

 

 

彼女のいう退屈という言葉の意味を。

 

 

僕は知っていた。

 

 

彼女がなぜ僕と寝たのかを。

 

 


 彼女は振られたのだ。若き作家志望であり、友人の先輩であり、僕の恋敵とも呼べる才覚溢れる彼に、振られたのだ。
彼女は交際も退屈しのぎだったと自分に言い聞かせているのだ。彼との交際は単なる退屈しのぎで、私は退屈しのぎの一つをなくしただけなのだと。

 

「退屈ね。」

 

 

 以前の僕であれば、その言葉を聞くたびに、天井が一段ずつ下がってきているような圧迫感を感じていただろう。なぜなら彼女が「退屈ね。」とつぶやくたびに、僕が彼女の退屈しのぎにすらならないことを聞かされているような気がしていたからだ。

 

 


しかし僕の心情は一貫して穏やかだった。

 

 


 街が、今日を準備し始めて車道が騒がしくなり始めたころ、僕は窓から注がれる朝日に照らされながら天井を見つめていた。彼女の入るシャワーの音を聞きながら僕は、考えを巡らせていた。

 

 

 彼女がシャワーから上がり、自分の服を纏うと乱れたシーツの上で寝転びながら一瞥もしない僕を見て「じゃあ、そろそろ帰るね。」と比較的明るい声色で言った。

 

 


「あ、うん。」

 

 


僕はそれを聞いて立ち上がり、ドアを先に開けた。

 

 


「女だくときくらい、ちゃんと爪切っておきなね。」

 

 


「あ、うん。ごめん。」

 

 


 彼女はそうして、颯爽と僕とはまるで何もなかったかのように帰っていった。僕はそんな彼女を見送って、扉を閉めた。少し紅潮する頬を抑えて。


 窓から入る冷たい風が僕を刺した後、机の上に広がる僕の世界をさらう。
床に散ったそれを見る僕の冷えた体を温めるように、日の光が僕を照らした。
しかし、その光は僕にはとってもまぶしすぎて僕は思わずカーテンを閉めてしまった。
僕はそのまま横になった。

 


僕は知っていた。

 

 

どうして僕が、穏やかであれたかを。

 

 


 僕は彼女の才能に、それを表現する彼女に惚れていたのだ。惹かれあう強烈な才能の前に僕は成すすべなく敗北したのだ。そして、その時、僕の中で彼女の存在が絶対的なものになった。それは決して崩れることのない、憧れであり、象徴であり、理想であった。

 
 僕は一つ浅いため息をついて、布団に入り、巡らせた考えを投げ捨てるようにして頭の隅に放り投げた。

 


僕はその日、夜になるまで眠り続けていた。


 

 目の前で崩れたそれらを、僕の中で、拾い上げても拾い上げても、僕の好きだった、あの憧憬的で、象徴的で、理想的で、絶対的であった彼女に作りなおすことが、どうしてもできなかった。

 

だから僕は、穏やかであれたのだ。

 

 

 


ただ僕は、彼女の才能に

 

 


自分で作り上げた彼女の偶像に惚れていただけなのだ。

 

 

 


目を覚ました時、街はもう眠りにつく準備をはじめ、街灯の洩れた光がカーテンの隙間から差し込んで、僕と、そして僕の作った世界の載った、今ではただの紙屑達をうっすらと照らしていた。

 

 

インパルス

 寺町通四条河原町から抜け、かに道楽を右に曲がる。三条通の交差点をこれまた右に曲がりしばらく歩いたところにあるのがインパルスという喫茶店である。

 

 入り口を正面に縦長に伸びた喫茶店で、手前がカウンター、奥が座席という形になっているが、手前のカウンターには埃と、マスターの読み散らかした、いつのだか分からなくなってしまった新聞とがあり、もう使われてはいない様子だった。

 

 座席とカウンターの間にはショーケース型の冷蔵庫がケーキやプリン、マスターが食べるためのアイスの箱を入れてガタガタ動いていた。奥の座席には四人席が三席並んでいるが、左手の壁際に長い革張りのソファに詰めて座りさえすれば、六人席にもなるであろう。背もたれのない足が一本の丸椅子がそれぞれ二席ずつその座席に置かれている。テーブルは陳腐なものでガタガタと揺れはするものの、文句を言う客は一人もいなかった。煙の臭いと、そういういい意味での汚れが好きな客しか集まらないからである。

 

 確かに最近の純喫茶ブームで大学生やカップルが入ってくることもあり、商売としては困ることはなかったが丸眼鏡を仏頂面にかけた老輩がそれを喜ぶことは決してなかった。

 ただ、憎みも恨みもしなかった。店主である彼にとってそんなことはさして問題ではない。客は客、ただそれだけだという至極当然ながらも博愛とも平等とも、またはそれの逆で蔑みともとれる態度を通していた。彼を語るのであれば、そんな詮索さえも意味がないものになってしまう程彼の中で客というのはただの、そういった対象でしかなかった。そんな彼が、今この店に客が二人しかおらず、その二人の声が店内に響き渡ろうとも決してきにすることは、あるはずがなかった。

 

 わざわざ寺町通を抜けてここまで来たのはこの二人の男子、三浜と幸谷のここまでの道順であり、幸谷の人の行動や言動から、心理や想いなどを分析するための観察(彼はいつもそうやって学術的に表現するが。)をするための道順でもあった。幸谷の幅の広い頬と少し内に入った顎に、薄い唇とふっくらと膨らむ丸い鼻はバランスが悪く学のない印象を与えるものであったが、長い髪と少し垂れた一重がそれをより象徴的にしていた。

 彼は特に人に会うときには必ず大きな古本を手元に持っていくのであるが、今日も例外ではなかった。彼の右手のすぐそばに、今日は星新一の傑作集であったが、しっかりと先日三条京阪駅の上のブックオフで買ったものが置かれていた。彼は確かに、間抜けや阿呆、馬鹿というったような罵倒に対してコンプレックスがあり、いかに自分が学術的であるかという点に関しては、抜かりないようにしていた点がある。しかし、それを真に見抜かれたくはないという恥ずかしさも抱えており、その葛藤が時にどちらに転ぶかで彼の一挙手一投足は決定されていた。外見的に学がなさそうであるのは確かにこの幸谷であったが、真に学がないのはその目の前、革張りのソファに足を組みながら煙草を吸う三浜のほうだった。

 彼は短く、ポマードで整えた髪を店内の光で照らしている。きれいな鼻筋と曲線美を描く二重、しゅっとした輪郭は知性を思わせ、品行と方正とを掛け合わせていた。


「お前はいつだって、古本を持っているけれど俺に何か言いたいことがあるのかい?」


「そういうわけじゃないさ、ただ本が近くにあると落ち着くんだ。」


「お前は俺に自分の学をひけらかしたいんじゃないのかい。この俺にさ。それなら過ぎた話だよ。俺はお前に学があるのは十分承知なんだからね。」


 三浜は随分と不貞腐れたような顔をした。舌に残ったアイスコーヒーの苦みを楽しみながら少しの言葉遊びとして幸谷をからかっただけで、ただの幼馴染としてのじゃれあいのつもりであったが幸谷はこれを挑戦的なものと受け取り、どうも胸の中で微動するイラだちがそっくりそのまま口から出てきてしまった。


「違うっていっているじゃないか!」


 そう自分の中のコンプレックスに背中を押されて放たれた言葉に「ごめん、大きな声を出しすぎた。」と訂正を加えたのをみて、三浜はまた彼をからかうように言った。


「それならお前。お前は古本のどこが好きで、それを買ったりして、持ち歩いているんだい。それをただ持ち歩くだけのアクセサリーとして扱うのであれば、俺の言ってることは正しいという事にはならないか。是非説明してくれたまえ!お前!」


「僕はね、君。僕はさ、この古本の特に前の持ち主が記入したであろう付箋であったり、マーカーであったり、書き込みであったりを特に好んで観察しているんだよ。」


「本の価値といえばその本に書かれている情報であったり、物語であったりするわけだがお前は違うというんだね。そこが古本にこだわる理由という事なんだね。でもそのお前の言う、付箋であったり、マーカーであったり、書き込みであったりを観察することでさ、お前。何が一体分かって、何がそんなに楽しいんだ。」


「君も知っての通り、僕は人の言動や行動がどんな意図があってどんな心理で働いたのかという一抹の疑問にたいして常に、そう常にだよ!研究しているんだが、これはそう、全うに学術的と言えるほどだ。その研究ができる対象を見つけることに興味し、歓喜し、楽しんでいるんだよ。それを見つけるために僕は生きているといっても過言ではないね。この複雑化された日本、いや世界でだよ?どうして単純に行動することができる?例えばね、君。このコーヒー1つだってそうさ。例えばこれがフェアトレードではなく何か搾取された結果ここに運ばれてきているとすればだよ。確かにそういう事例があったんだがね、君はそれを知ってこれを飲むことはするかい?僕は飲めるけども、おそらく飲めない人も多いだろうね。そうしたらどうだい、ここの店の売り上げは下がるだろう?下がるんだよ君。ここの主人がそういう事に無頓着なことは別にしてね。情報を知ったことでさ、客がここのコーヒーは飲まないという行動を起こしたのはとても興味深いじゃないか。とても善意的な行動だろう?でもどうだろう、もしこの店が売り上げ不振でそのコーヒーからフェアトレード商品に変えるとするよね?そうしたらどうなると思う?搾取されていたとしても少しの報酬が手に入っていた極貧農民たちは、その報酬さえもらえなくなって餓死してしまうのさ!それを知ったらここの客はどうするかな。善意的にコーヒーを飲まなくなった連中の事だからね、きっとフェアトレードでなくても飲むだろうね!飲むんだよ君!新たな情報が開示されればさっきまで正義を振りかざしてね、それも善意的にだよ。飲もうとしなかった連中は飲むのさ。そうしたら、搾取は進み現状はさ、連中が何も知らなかった時と同じ状況から変わることはないのさ。これはとても興味深いことだとは思わないかい、君!そうだろう!」


「確かにそれは興味深い。しかしね、お前。その知識をひけらかしているじゃないか。やはりお前は、その古本を持ち歩くための、いわゆる準備的なそれも用意周到な理由を持っている。だけどさ、お前はその知識をひけらかし、自分に学があるということ俺に、この学のない俺にだよ、知らしめているじゃないか。それはお前が、さっき、そうついっさきにさ、「本を持ち歩く理由は学をひけらかすためだ」という事に対しての否定の理由にはなっていないよ。お前。だって、本の話題がお前のその偉い知識をさ、ひけらかすことにつながったんだからね。古本を持つのは、学をひけらかすためだという事と同じことじゃないか。」


「いいかい君、では僕が、この本に見出した面白さを紹介することによってだね、君、そのふざけた屁理屈を論破して見せるからね。よく聞いておくんだよ君、ここ、ここをごらんよ君。これはぼっこちゃんという題のショートショートさ。ここに付箋が張ってあるのさ、汚い字だけどね、読めなくはない。『みんなが最後に死ぬところがよかった。』だなんて書いてあるんだ。君、これは実に興味深いじゃないか。誰がこの平和な日本で、しかも星新一なんかを読むような幻想好きにだよ、みんなが死ぬのが良いなんて言うんだろうね。この現実世界でそんなこと望むような人はこの京都で、しかもこの本をブックオフで売ろうなんて考える人でいるとは思えないだろ?でも、この話のなかでは、みんなが死ぬことを望んでいるんだ。現実では望まないのにだよ。何が違うんだろうね、現実の世界の人間と、話の中の人間とがさ、何が違うっていうんだい?同じ人間だのにね。すごく残虐だと思わないかい?しかもこの後の作品のところにだよ「面白かったが、長すぎてうざかった。」なんて書いてあるんだ。笑っちゃうじゃないか。この本は定価で四千円もするんだ。そんなのを買うのはファンくらいだろう?そんなファンが、称えるべき作者にうざいなんていうんだよ。そして売っちゃうんだ。律儀に感想を付箋で残しておくのにだよ。これはとても矛盾した行為と言えるんじゃないかな。人間性ともいえる。誰しも表と裏、矛盾を抱えているんだよ。それがこの古本から、本の情報以外に手に入ると考えたら、面白いじゃないか。これがぼくが古本を持つ理由だよ。それをいつでもこうやって思い出すことができるからね。」


「そうか、良くはわかったよお前の話は。じゃあどうだい、目の前にある全然進まない、甘さと苦さの矛盾、つまり君の言う人間性が詰まったアイスコーヒーを飲み干してくれないかな。そろそろ映画の時間だ。」


そういうと二人は数秒見つめあい、緊張の糸が途切れたように笑いあった。

 

三浜の声は特に大きく響いたが、引きつりながら「なんだよこれ。笑っちゃうよ。」としぜんと溢れた涙をぬぐった。「お前が始めたんだろ三浜。それにしてもお前、これだけ詭弁が言えたら大学通えるぞ、学びなおせよ。」と少し真面目な顔で幸谷が諭すように言ったが、三浜は首を横に振り「俺はそういうのは向いてないからさ」と笑った。


「陶芸家もすげえよ、お前がそういう職人の道に進むって聞いた時さ、誰より応援したいと思ったもん。同時にさ、俺も頑張らないとなって。」


「俺は、幸谷に影響されてそういう道を選んだんだけどね。」


「でも、さっきの人間性コーヒーは傑作だった!お前落語家にもなれるぞ。」


「うるせえ、俺は陶芸家になるって決めてるんだよ馬鹿。」


「お前、俺に向かってバカってやめろよ!」


 そんな二人の会話が、喫茶店を揺らしていても仏頂面のマスターは決して気にならなかった。彼は、幸谷の言う人間性という矛盾を、客に対しては一切持たないという点では、人間性から最もかけ離れているともいえよう。

 しかしこの時ばかりは、この仏頂面も「人間性たっぷりのコーヒー。」とぼそっと洩らした。彼が、その話をすっかりまねて書いた現代落語が新聞の賞になった時には彼らはお互いに、陶芸家と学者として大いに活躍していた。そんなふたりにかけてこの落語は「香味(幸谷の『こう』と三浜の『み』を無理やりとった。)のコーヒー」として聴衆に人気のものとなったのだが、幸谷はアメリカの大学で客員教授をしていたし、三浜はパリやヴェニス、またロンドンなどでジャパンエキスポや政府主体、または陶芸連盟主体の作品展示で忙しくしていたので全くその落語の存在すら知ることはなかった。

 

それでも二人は共通して、自分たちのようにくだらない話をインパルスでしている学生たちがいるんだろうなと漠然と思っていたし、それは現実として事実だったし、そういう学生が好む場所がこのインパルスという場所だった。

ニット

『ウィンナーコーヒーなんてコーヒーあるわけないじゃない。だってコーヒーにウインナーが入ってるわけないもの。』

 

 聳え立つビル群に遮られる空を見上げ、どこか窮屈さを覚えた。どこまでも自由で、どこまでも高いはずの空が、いつの間にか僕にはどこか限定的で、束縛にも似た閉塞感の象徴にまで陥ってしまっていた。本来のあるべき空の姿は、とうに忘れてしまっていたのだ。


 柄にもなく、空を見上げて物思いにふけり、いわゆるおセンチになってしまっていた僕の携帯電話に、訪問先が神保町から錦糸町に変わったという旨の電話が入った。二つ折りの携帯電話をポケットに入れて在来線に乗り込む。クーラーの良く効いた、電子公告の流れる車内は静かだった。

 

 


 錦糸町か、気分はあまり乗らないな。

 

 


 東京は何年かぶりの大寒波で雪と表現するには優しすぎる空からの礫が連日降り注いでいる。こんな日に出歩く二足歩行生物はイエティぐらいで十分だ。そんな風に軽くついたため息でさえ、凍ってしまうのではないかと軽く笑った。凍った路面は、履き潰した革靴と相性が悪い。

 

 

 なんて事のない商談が終わり駅へ向かう帰り、タイミング悪く振ってきた雪から逃げるようにして喫茶店ニットの扉を開く。

錦糸町ハイタウンを右手に見ながら京葉道路に当たるところまで進み、左手に見える喫茶店だ。駅から向かえば、駅前の交差点の対角線にある。

 

 

 今日はついてないな。

 

 


 そう心の中で呟くと暖かい風が僕の髪を撫でた。橙色の照明と、歴史を感じる革ソファ。タバコの匂いと赤い絨毯が、加速度的に近代化していく東京から取り残されているように感じた。それがどうしてか、切なく寂しい気持ちになった事を、窓際へ案内され、水とメニューを渡されたあと、東京へ出てきた当時に買った色あせたコートを椅子にかけた時にはっきりと理解した。

 

 


 取り残されているのは自分も同じなのだ。

 

 


 資本自由化の渦の中で産声をあげ、石油ショックを学生時代に経験した僕は、18の頃に上京した。まだ東京は路面電車が走っていたし、夏になると団扇を仰ぐ余裕もないほどの密度で動く車両の中は、煙草の匂いが充満していた。空気は今よりも悪かったが、人も今より悪かった気がする。働いてすぐにプラザ合意がなされ円高不況に陥り、二度転職した。加速度的な発展を、その渦中で、いわば加速器的な役割を担ってきた僕が、到達点ともいえるこのトウキョウに置いて行かれている。

 

 


世代交代かね。

 

 


 二つ折りの携帯電話を見ながら、そろそろスマホに変えようとして呟いたこの一言も自分に言い聞かせているようだった。確かに東京は変わった。あの激動ともいえる数十年が、自由であるはずの空を変え、窮屈であったはずの車内を変えた。そして、あの頃最先端だった携帯電話まで変わりつつある。いや、もはや変わってしまったのだろう。僕の感覚と、若者の感覚はおそらく10年の開きがある。僕はもう、このトウキョウを加速させることもできない。車輪の錆となり、すぐに消えていく運命だ。

 


 ふと窓の外を見ると傘をさす母親に連れられた2人の子供が僕の目を引いた。暖かそうなコートをまとった母親とは対照的に二人の子供は短パンを履いて降り出した雪にはしゃいでいる。

 

 そんな姿を見ながら、水を一口含むと僕の脳内に一枚のモノクロ写真が浮かぶ。背景は実家の裏にあったブランコとシーソーだけの質素な公園で、ちょうどあの子供のように二人の子供が、雪の中はしゃぎまわっている。僕の投げた雪が女の子の顔面に当たり泣きべそをかいていた。

 

 その子は大人ぶった女の子で、いつも僕を小馬鹿にしていた。高校に入るまではその公園で僕と彼女はよく二人で夕食までいろんな話に花を咲かせていた。


彼女の名前はなんだったか。そんなことも忘れてしまった。

 

 

 

僕はメニューの中にウィンナーコーヒーを見つけて軽く笑った。

 

 

 

「ウィンナーコーヒーなんてコーヒーあるわけないじゃない。だってコーヒーにウインナーが入ってるわけないもの。」

 

 

いつも子供扱いをする彼女に見直してほしくて、好きなコーヒーなんて話題を引っ張り出した時の話だ。僕が、ウィンナーコーヒーが好きと必死についた嘘を彼女は一蹴した。

 

 


僕は手を上げて店員を呼ぶ。「紅茶を一つ。アールグレイで。」

 

 

 


「そもそもコーヒーって好きじゃないの。私はもっぱらアールグレイね。知らないでしょ?紅茶なのよ。」

 

 

 

彼女のいたずらな笑顔が窓の外に映ったような気がした。

 

 

 

僕は小さく、「アールグレイはイギリスの公爵の名前から来ているんだよ?知らないでしょ?」と反論した。

 

 

大人気ないその一言は、思い出に溶ける事なくただ変わり果てたトウキョウの錦糸町に響き渡るどころか、目の前の水の波紋になることもなく、ただそこにそうっと現れて、誰にも気づかれることもなく消えていった。

 

 

 

 

 

 

大寒波は、あと数日続く予報だった。

 

 

 

 

なろうサイトにて、作品制作の経緯や想いを載せています。是非そちらもご覧ください。

小説情報からあらすじにいけます。

https://ncode.syosetu.com/n1842fq/

 

 

六曜社

寺町通から、三条通りを鴨川の方へと抜ける。

連日の猛暑は、各地の記録を続々と塗り替え、あまりにも簡単に記録的という言葉がテレビの向こうから聞こえてくるものだからそのうちに、彼は体にべったりと執拗にこびりつく熱気にも関心を示さなくなってしまっていた。

白いTシャツに汗がにじむのがわかる。

河原町通との交差点を少し下ったところに地上と地下に別れた喫茶店六曜社の看板を見つけた彼は、耳に流れるフランクシナトラのfly to the moon の音量を下げながらしばらく看板を見つめると、地上の方の自動ドアの前に立った。

自動ドアが開くとタバコの匂いが彼の鼻に付く。

相席でよければと店の中央に案内され、二人がけの古い革ソファに座った。

前にはタバコをぷかぷかとしながら新聞を読む老婆が座っている。

彼女は眉をひそめて難しい顔をしながら、丁寧にその活字の海を眺めていた。

広い海の底に眠る本質を見極め、必要となる事実だけを海の上から掴み取り、それらを繋げながら彼女は活字の海を進んで行く。

彼はオリジナルブレンドをコールドで頼み、一通り店内を見渡した。

木を基調にしたモダンな雰囲気が漂う店内に空席はない。

彼が座ったソファ席を含め4人掛けの席が4つ、

入り口を正面にした左手に並んでいる。

右手には、手前に客が座ることのないカウンターがあり、少し広くなった奥の方には5人ほど座れる席が2つほどあった。

窓はなく、橙の照明が二つ、店の奥を落ち着いた雰囲気に演出している。

天井に埋め込まれたいくつかのLEDライトと、バーカウンターに付けられた四角い照明が、彼の座っている一帯を明るくしていた。

 

彼は一冊の本を取り出した。

白いブックカバーにはスヌーピーが刻印されている。

彼がスヌーピー好きの彼女にもらったものだ。

1953年から1997年までのスヌーピーがブックカバーの端っこに描かれている。

ウエイターがコーヒーを、前の小さな机に起くと、彼は軽く頭を下げた。

ミルクを入れてから、ストローでくるくると回し一口飲むと、甘さの中に顔を出す苦味が口の中に広がる。

彼は本を開き村上春樹アフターダーク*1の続きを読み進めた。

本の中では、キャラクター達が過去を告白している。それは、彼が経験のしたことのないような暗く重い過去だった。

それでもキャラクターたちはそれがこの世界では当たり前であるかのように、淡々と話している。

 


本から顔を上げる。

 


コーヒーをもう一口。

 

 


目の前でタバコをぷかぷかとしている老婆も。

右で明日のランチをどうするかでもめているカップルも。

左で古書を読んでいる髪の長い大学生も。

カウンターで無言でコーヒーを淹れている乱視のマスターも。

何か壮絶な経験をしているのだろうか。

 

と彼は考える。

 

もしかしたら目の前の老婆は昔、強盗団の一員で行方不明になった仲間たちを見つけるために、必死で新聞を読んで手がかりを見つけようとしているのかもしれない。

カップルの彼氏の方が明日、恋人を殺める計画を立てているためにランチの予定を変えられては困るのかもしれない。

マスターは裏の世界から足を洗ってこの店をやってるのかもしれないし、髪の長い大学生は、どこかの国のスパイかもしれないのだ。

そう考えると、自分が全くもって、何の特質もない、つまり何の意味も持たないような平凡な人生を送っているのではないかという考えが浮かんだ。

しかし、それら、いわば特殊な経験をしている事が至極普通なのであれば、逆に自分が一番平凡ではないのかもしれない。

 

とそんなそよ風で飛んで行きそうなくらい薄い哲学をするのも、そんな妄想がたまらなく好きなのも、全てはこの世界に蔓延する数多くのくだらない書籍のせいだと彼はよく自分の妄想癖を世界中の本のせいにした。

 

彼は、勝手に作り上げた彼女らの人生に想いを馳せることに飽きると再び、深夜の大都会での一幕へと目を向けていた。

 

 

 

 

 

 


いくらか時間が経った。

 

 

 

 

 

 


僕らにとっては一瞬だった。

 

 

 

 

 


老婆はもう、活字への航海を終えてどこかへ行ってしまった。

 

カップルは、写実主義とリアリズムについて話している。

 

髪の長い大学生が会計を済ませ、マスターは椅子に座って休憩中だ。

 


僕らは彼に世界の視点を合わせる。

 

 

 

 

彼の世界は今はその視線の先の本にある。

 

彼は今、深夜の大都会の一幕を覗き見している。

 

彼は確かに、そこにいるキャラクター達の進んでいく物語や、喜怒哀楽を感じている。

 

集中すればするほどそのキャラクター達の存在は濃くなり、息遣いすら聞こえてくる。

 

確かに、本の中に、彼らは存在している。

 

しかし、本の中のキャラクターが彼に気付くことはない。

 

 

集中するあまり、大学生が今出て行ったことも、カップルの討論が激しさを増していることにも、マスターが今くしゃみをしたのにも彼は気づかなかった。

 

ただ唯一、飲みかけのコーヒーと耳に流れるペニーグットマンのsing sing sing、

そしてタバコの匂いだけが彼の世界にかろうじて存在出来ている。

 


それになぜだか僕らは、どうしようもなく寂しくなった。

 

 


深夜の大都会にいるキャラクターたちは、彼がのぞくことで世界が構成されている。

 

 

 

 


彼やこの喫茶店の人々の世界も、僕らが覗いていることで世界が構成されている。

 

 

 

 


だけれど僕らはどうだろう。

 

 

 

 

 

誰にも覗かれることはなく、気づかれることもない。

 

 

 

 


この世界に彼らが存在することは僕らが証明している。

 

 

 


だけれど僕らはどうだろう。

 

 

 


僕らは誰からも証明されずにとり残される。

 

 

 


僕らには世界がないのだ。

 

 

 


彼は満足げに本を閉じ、立ち上がり会計を済ませると、向こうの空にできた大きな雲を

見上げた。

 

「雨が降るかな。」

 

 

と一言だけ言うと、市内の居候先の家へと、歩みを進めた。

 

 


京都には台風が近づいていた、夏の1日。

 

 

僕らはまだ、存在すらしていなかった。

 

 

 

 

なろうサイトには、あらすじにて作品制作の経緯や想い、を書きました。よろしければそちらも。

小説情報の欄から、あらすじにいけます。

https://ncode.syosetu.com/n1298fq/

 

 

*1:作中には村上が表現する、深夜の都会という「一種の異界」が描かれている wikipedia参照 アフターダーク - Wikipedia